
タイ旅行を計画する際、タイの狂犬病のリスクについて不安を感じる方も多いでしょう。タイで狂犬病にかかるリスクは?万が一、狂犬病の疑いがある動物に噛まれたらどうすればよいか、あるいは、狂犬病は舐められただけで感染する?といった疑問は、命に関わる重要な問題です。この病気は発症すると、狂犬病にかかると何日で死にますか?という問いの答えが示す通り、非常に短期間で命を落とす危険な感染症です。だからこそ、旅行前にワクチンや予防接種の必要性、そして感染の確率を正しく理解しておくことが求められます。過去にはタイで感染した日本人の死者が出た事例もあり、決して他人事ではありません。
- タイにおける狂犬病の具体的なリスクレベル
- 狂犬病の主な感染経路と恐ろしい症状
- 万が一動物に噛まれた場合の緊急対処法と病院での流れ
- 旅行前に日本で準備できる予防接種(暴露前接種)の詳細
タイにおける狂犬病の現状とリスク

- タイでの狂犬病の発生状況と日本人の感染リスク
- 狂犬病の主な感染経路(犬、猫、その他の動物)
タイでの狂犬病の発生状況と日本人の感染リスク
タイは、残念ながら狂犬病のリスクが依然として存在する国の一つです。厚生労働省検疫所(FORTH)などの公的機関も、タイを狂犬病の流行国として注意喚起しています。
(参照:厚生労働省検疫所 FORTH 狂犬病について)
現地では、特に飼い主のいない犬や猫が都市部や観光地にも多く存在します。これらの動物すべてがウイルスを持っているわけではありませんが、一部が感染している可能性は否定できません。タイ国内では、現在でも狂犬病による死者が報告されています。
日本人旅行者がタイで狂犬病に感染する確率自体は非常に低いですが、ゼロではありません。過去には、タイで犬に噛まれ、帰国後に発症して亡くなられた日本人の事例も報告されています。この事実は、タイ 狂犬病のリスクが現実のものであることを示しています。
リスクは「低い」が「ゼロ」ではない
「自分だけは大丈夫」という油断は禁物です。観光地であっても、人懐っこく見える動物であっても、狂犬病ウイルスのキャリアである可能性は常に考慮に入れる必要があります。
狂犬病の主な感染経路(犬、猫、その他の動物)
狂犬病ウイルスは、主に感染した動物の唾液に含まれています。最も一般的な感染経路は、そうした動物に噛まれることです。
タイで注意すべき動物は以下の通りです。
- 犬: 最も主要な感染源とされています。街中を徘徊している野良犬には特に注意が必要です。
- 猫: 犬ほど多くはありませんが、猫からの感染例も報告されています。
- コウモリ: 洞窟探検などで接触する可能性があります。コウモリも狂犬病ウイルスの重要な保有動物です。
- その他: アライグマ、サル、キツネなど、基本的に全ての哺乳動物が感染・伝播する可能性があるとされています。
噛まれた場合だけでなく、引っ掻かれた傷口や、目・口などの粘膜を舐められた場合でも、唾液が付着すれば感染のリスクが生じます。動物の爪には自身の唾液が付着していることが多いため、引っ掻き傷も噛まれた場合と同様に危険視されます。
WEBライターの視点:
タイでは、お寺などで犬や猫が放し飼いにされている光景をよく目にします。彼らは比較的おとなしいことが多いですが、不用意に手を出したり、驚かせたりしないことが鉄則です。可愛いからといって、安易に触れようとするのは絶対に避けてください。
狂犬病の基礎知識:症状と致死率

- 狂犬病とは?発症した場合の致死率
- 感染後の症状の進行(潜伏期間と発症後の日数)
- 舐められただけでも感染する?具体的な感染ケース
狂犬病とは?発症した場合の致死率
狂犬病は、狂犬病ウイルス(Rhabdovirus科 Lyssavirus属)によって引き起こされる感染症です。この病気の最も恐ろしい特徴は、一度発症してしまうと、有効な治療法が存在せず、致死率がほぼ100%である点です。
ウイルスは神経系を侵し、脳に達して深刻な神経症状を引き起こします。日本国内では長らく発生が確認されていないため(輸入症例を除く)、その恐ろしさが実感しにくいかもしれませんが、世界保健機関(WHO)の報告によれば、世界では毎年数万人が狂犬病によって命を落としているとされています。
この「発症したら助からない」という事実こそが、私たちがタイ旅行で狂犬病を最大限に警戒すべき理由です。
感染後の症状の進行(潜伏期間と発症後の日数)
狂犬病にかかると何日で死にますか?という疑問は多くの方が抱くものですが、この病気は「潜伏期間」と「発症後」で大きく異なります。
潜伏期間
ウイルスが体内に入ってから症状が出るまでの潜伏期間は、非常に幅があるのが特徴です。一般的には1ヶ月から3ヶ月程度とされていますが、噛まれた場所(脳に近いほど短い)やウイルスの量によって異なり、1週間未満の場合もあれば、数年後に発症したという報告もあります。
発症後の症状と進行
発症すると、症状は急速に進行します。
- 前駆期 (2〜10日):
発熱、倦怠感、頭痛、吐き気など、風邪に似た症状が現れます。また、噛まれた場所(傷は治っていても)に痛みや痒み、知覚異常(チクチクする感じ)が出ることが特徴的です。 - 急性神経症状期 (2〜7日):
この時期には、2つの型に分かれます。
・狂躁型(約80%): 興奮状態、不安感、錯乱などが現れます。特に、水を飲もうとすると喉の筋肉が痙攣(けいれん)し、激しい痛みを伴うため水を極端に恐れるようになります(恐水症)。また、風が顔に当たるだけでも同様の痙攣が起きる(恐風症)こともあります。
・麻痺型(約20%): 噛まれた部位から徐々に麻痺が始まり、全身に広がっていきます。 - 昏睡期:
どちらの型でも、最終的には全身の麻痺が呼吸器に及び、呼吸停止によって昏睡状態に陥り、発症から数日〜10日程度でほぼ100%死に至ります。
ポイント:発症前の対処が全て
狂犬病は「発症したら助からない」病気ですが、逆に言えば「発症する前」であれば助かる病気です。万が一噛まれても、直後に適切な「暴露後接種(ばくろごせっしゅ)」と呼ばれるワクチン接種を開始すれば、発症をほぼ100%防ぐことが可能です。
舐められただけでも感染する?具体的な感染ケース
「狂犬病は舐められただけで感染する?」という疑問も多く寄せられます。これに対する答えは「状況によりますが、リスクはあります」です。
前述の通り、ウイルスは唾液に含まれています。感染が成立するためには、ウイルスが体内の神経系に到達する必要があります。
| ケース | 感染リスク | 解説 |
|---|---|---|
| 健康な皮膚を舐められた | 低い(ほぼ無い) | ウイルスは健康な皮膚(傷がない皮膚)を通過できないとされています。 |
| 傷口を舐められた | 非常に高い | 切り傷、擦り傷、ささくれなど、目に見えないような小さな傷でも、そこを舐められるとウイルスが侵入する経路となります。 |
| 粘膜(目、鼻、口)を舐められた | 非常に高い | 粘膜は皮膚と違ってバリア機能が弱く、ウイルスが侵入しやすい部位です。動物の唾液が飛んで目に入るなどのケースも含まれます。 |
| 引っ掻かれた | 高い | 動物が自分の爪を舐めていた場合、その爪に付着した唾液が傷口から侵入する可能性があります。 |
このように、単に「舐められた」という行為だけでなく、「どこを」舐められたかが重要です。しかし、自分で認識していない微細な傷がある可能性も考慮し、動物に舐められた場合、特にそれが傷口や粘膜であった場合は、噛まれた時と同様の対処が必要になります。
【重要】タイで動物に噛まれた時の緊急対処法

- 噛まれた直後にすべきこと(洗浄と消毒)
- すぐに病院へ!タイでのワクチン接種(暴露後接種)
噛まれた直後にすべきこと(洗浄と消毒)
もしタイで犬や猫、その他の動物に噛まれたり、傷口を舐められたりした場合、絶対にパニックにならず、以下の応急処置を直ちに実行してください。これが発症を防ぐための第一歩です。
狂犬病 噛まれたら:即時行うべき応急処置
- 傷口を洗う(最重要)
すぐに石鹸(または洗浄剤)と大量の流水(水道水で構いません)を使い、傷口を最低15分間、徹底的に洗い流してください。傷口を絞り出すようにして、奥に入った可能性のある唾液(ウイルス)を洗い流すイメージです。 - 消毒する
洗浄後、清潔な布で水分を拭き取り、アルコール(70%エタノール)やポビドンヨード(イソジンなど)といった消毒液で傷口を消毒します。 - 病院へ急ぐ
これらの処置が完了したら、直ちに医療機関(病院)へ向かってください。
やってはいけないこと
- 傷口を口で吸い出す: 口の中に傷があった場合、そこから感染するリスクがあり危険です。
- 自己判断で様子を見る: 「小さな傷だから」「血が出ていないから」といって放置するのは絶対にいけません。狂犬病のリスクは傷の大小では決まりません。
- 絆創膏などで密閉する: 狂犬病以外の感染症(破傷風など)のリスクもあるため、洗浄・消毒後は清潔なガーゼを当てる程度にし、すぐに医師の診察を受けてください。
すぐに病院へ!タイでのワクチン接種(暴露後接種)
応急処置をしたら、一刻も早く病院で「暴露後接種(ばくろごせっしゅ)」を開始する必要があります。これは、感染した可能性のある時点から、発症を防ぐために接種するワクチンプログラムです。
病院で伝えること
病院に着いたら、医師に以下の情報を正確に伝えてください。
- 動物に噛まれた(または舐められた、引っ掻かれた)こと
- いつ、どこで、どの動物にやられたか(犬、猫、サルなど)
- その動物の様子(飼い犬か野良犬か、異常な興奮はなかったか等)
- 日本で狂犬病の予防接種(暴露前接種)を受けているかどうか
タイでの治療(暴露後接種)

タイ、特にバンコクなどの都市部にある私立病院(サミティベート病院、バムルンラード病院、バンコク病院など)は医療水準が非常に高く、高品質なワクチンが常備されています。治療はWHO(世界保健機関)の推奨ガイドラインに沿って行われます。
治療内容は、日本で予防接種(暴露前接種)を受けていたかどうかで異なります。
| ① 予防接種を「受けていない」場合 | ② 予防接種を「受けている」場合 | |
|---|---|---|
| 初回(0日目) | ・狂犬病ワクチン ・免疫グロブリン(RIG)(※傷が深い場合など) |
・狂犬病ワクチン (免疫グロブリンは不要) |
| その後の接種 | 3日後、7日後、14日後、28日後の計5回(または6回)のワクチン接種が必要とされます。 | 3日後の計2回のワクチン接種で完了とされます。 |
(※接種スケジュールは、使用するワクチンの種類や医療機関の判断により異なる場合があります。)
免疫グロブリン(RIG)とは、体内に侵入したウイルスを直接中和するための抗体製剤で、特に傷が深い場合や頭部に近い場合など、リスクが高いと判断された場合にワクチンの初回接種と同時に傷口の周囲に注射されます。
WordPressエキスパートの視点:
暴露前接種(予防接種)を受けておくと、万が一の際の治療回数が劇的に減り、費用も抑えられます。さらに、非常に高価で入手が難しいこともある「免疫グロブリン」の投与が不要になる点が最大のメリットです。旅行保険は必須ですが、それ以上に「予防接種」という事前の備えが重要になります。
旅行前にできる狂犬病の予防策
- 予防接種(暴露前接種)の必要性と効果
- 渡航前に日本でワクチンを接種する場合の費用とスケジュール
- タイ旅行中に動物と接する際の注意点
予防接種(暴露前接種)の必要性と効果
狂犬病には、噛まれる前に受けておく「暴露前接種(ばくろぜんせっしゅ)」という予防接種があります。タイ旅行の前に、このワクチンを接種しておくことには大きなメリットがあります。
暴露前接種の主なメリット
- 発症の予防: 万が一噛まれても、発症するリスクを大幅に低減できます(ただし、噛まれた後の追加接種は必要)。
- 暴露後接種の回数削減: 前述の通り、通常5〜6回必要な暴露後接種が、2回で済むとされています。これにより、旅行日程への影響や医療費の負担を軽減できます。
- 免疫グロブリン(RIG)が不要に: 高価で、時に供給が不安定な免疫グロブリンの投与を受ける必要がなくなります。これは特に地方都市や離島へ行く場合に大きな安心材料となります。
特に以下のような方には、渡航前の予防接種が強く推奨されます。
- タイに長期滞在する(駐在、留学など)
- 都市部から離れた地方や農村部、離島へ行く(すぐに高度な医療を受けられない可能性があるため)
- 動物と接触する機会が多い活動(ボランティア、フィールドワークなど)を予定している
- お子様連れの旅行(子供は好奇心から動物に近づきやすいため)
渡航前に日本でワクチンを接種する場合の費用とスケジュール
日本国内で狂犬病の予防接種(暴露前接種)を受ける場合、いくつかの注意点があります。
接種スケジュール
暴露前接種は、合計3回の接種が必要とされています。
- 標準的なスケジュール: 1回目(0日)→ 2回目(7日後)→ 3回目(28日後)
全ての接種が完了するまでに最低でも約1ヶ月かかります。タイ旅行の計画が決まったら、できるだけ早くトラベルクリニックや予防接種を行っている医療機関に相談し、スケジュールを立てることが重要です。
費用
狂犬病ワクチンは健康保険が適用されない自由診療となります。費用は医療機関によって異なりますが、目安としては1回あたり15,000円〜20,000円程度が相場とされています。
合計3回の接種で、総額45,000円〜60,000円程度の費用がかかる計算になります。安くはありませんが、現地で発症するリスクや、暴露後接種(特に免疫グロブリン)にかかる高額な医療費を考えれば、必要な投資と言えます。
補足:スケジュールが間に合わない場合
出発までに3回の接種が完了しない場合でも、2回接種しておくだけである程度の免疫効果は期待できるとされています。ただし、その場合の暴露後接種のスケジュールは医師の判断によります。まずは専門医にご相談ください。
タイ旅行中に動物と接する際の注意点
ワクチンを接種していても、していなくても、タイ旅行中は狂犬病のリスクを避けるため、以下の点を徹底してください。
「近寄らない、触らない、驚かせない」
これが鉄則です。
- 野良犬や野良猫には絶対に近づかない。
どんなにおとなしく見えても、人懐っこくても、距離を保ってください。 - 可愛いからといって、絶対に触ったり、餌を与えたりしない。
餌やりは動物を興奮させ、噛まれる原因になり得ます。 - サルにも注意。
観光地(ロッブリーなど)のサルは食べ物を奪うために攻撃してくることがあります。持ち物に注意し、目を合わせたり威嚇したりしないでください。 - 子供から目を離さない。
お子様は動物に興味を持ちやすいため、保護者の方がしっかりと監督し、動物に近づかせないように厳しく指導してください。 - 夜間に不用意に出歩かない。
夜間は犬が活動的になり、攻撃性が増すことがあります。
まとめ:タイで狂犬病から身を守るために
- タイ旅行における狂犬病対策の重要ポイント
タイ旅行における狂犬病対策の重要ポイント
- タイは狂犬病のリスクが現存する国である
- 狂犬病は発症すると致死率がほぼ100%の恐ろしい病気
- 過去にはタイで感染した日本人の死亡例も報告されている
- 主な感染源は犬だが、猫、サル、コウモリなど全ての哺乳類から感染しうる
- ウイルスは感染動物の唾液に含まれる
- 感染経路は主に「噛まれる」こと
- 「傷口や粘膜を舐められる」「引っ掻かれる」ことでも感染リスクがある
- 健康な皮膚を舐められただけでは感染しないとされている
- 潜伏期間は通常1〜3ヶ月だが、幅が広い
- 発症すると恐水症などの神経症状が出て、数日〜10日程度で死に至る
- 万が一噛まれたら、すぐに石鹸と流水で15分以上傷口を洗う
- 洗浄後はすぐに病院で「暴露後接種(ワクチン)」を開始する
- 暴露後接種を適切に行えば、発症はほぼ100%防げる
- 旅行前に「暴露前接種(予防接種)」を受けておくと、万が一の際の治療が2回で済む
- 暴露前接種は計3回、完了まで約1ヶ月かかるため計画的に行う
- 旅行中は「近寄らない、触らない、驚かせない」を徹底する

