タイへの旅行や移住を計画中の日本人の方にとって、多くの種類があるタイのビザは複雑に感じられるかもしれません。「タイにノービザで滞在できる期間は?」「観光目的ならどうすれば?」「タイの観光ビザは90日滞在できますか?」といった疑問や、「短期の出張ならビザは必要か?」「ビジネスビザの取得日数はどれくらい?」といった心配もあるでしょう。さらに長期滞在を考えると、「タイの5年ビザはいくらですか?」や、富裕層向けの「エリートビザ」についても気になるところです。この記事では、複雑なタイのビザ種類について、目的別に分かりやすく解説します。ビザ申請書の記入例に関する注意点にも触れていきますので、ぜひ参考にしてください。
- 自分に必要なビザの種類が分かる
- ビザなし(ノービザ)での滞在条件が分かる
- 観光ビザやビジネスビザの基本が分かる
- エリートビザなど長期滞在ビザの概要が分かる
目的別のタイ ビザ 種類を解説
- タイにノービザで滞在できる期間は?
- 観光目的のビザについて
- タイの観光ビザは90日滞在できますか?
- 日本人旅行者の注意点
- 短期出張ならビザは必要か?
- ビジネスビザの申請について
タイにノービザで滞在できる期間は?
タイへ観光目的で訪れる場合、日本国籍の方はビザなし(ノービザ)での入国が認められています。
結論から言うと、滞在できる期間は入国方法によって異なります。
- 空路(飛行機)での入国: 30日以内の滞在が許可されます。
- 陸路(バスや電車)での入国: 以前は15日でしたが、現在は30日以内の滞在が許可されています。ただし、陸路でのビザなし入国は、原則として暦年で2回までという制限があります。
このため、30日を超える旅行を計画している場合や、頻繁に陸路でタイに出入りする予定がある場合は、あらかじめビザの取得が必要です。
ビザランの規制強化に注意
過去には、ビザなしで入国し、滞在期限が切れる前に近隣国へ一度出国して再入国する(通称ビザラン)ことで滞在を延長する方法がありましたが、現在は規制が強化されています。特に陸路での連続した入国は、不法就労を疑われて入国を拒否されるリスクが非常に高いため、避けるべきです。必ずご自身の滞在目的に合ったビザを取得してください。
観光目的のビザについて
前述の通り、30日を超える観光を計画している場合は、「観光ビザ(ツーリストビザ / TR)」の取得が必要になります。
最も一般的な観光ビザは「シングルエントリー(TR-Single)」と呼ばれるものです。これは、タイ国外のタイ王国大使館または総領事館で申請し、取得します。現在、多くの申請はオンラインの「e-Visa」システムを通じて行われています。
このビザを取得して入国すると、入国日から最長で60日間の滞在が許可されます。
マルチエントリー観光ビザ(METV)
頻繁にタイに出入りする必要がある方向けに、マルチエントリー(METV)の観光ビザも存在します。これは有効期間(通常6ヶ月)中、何度でもタイへの出入国が可能で、1回の入国につき最大60日間滞在できます。ただし、取得には一定の預金残高証明が必要など、シングルエントリーよりも条件が厳しくなります。
タイの観光ビザは90日滞在できますか?
「観光ビザで90日間滞在したい」というご質問は非常に多いですが、結論として、1枚のビザで入国時から90日間滞在できる観光ビザは存在しません。
ただし、合法的に90日間滞在する方法はあります。
それは、まず前述の「観光ビザ(シングルエントリー)」を取得して入国し、60日間の滞在許可を得ることです。
その後、その滞在期限が切れる前に、タイ国内の入国管理局(イミグレーションオフィス)で「30日間の滞在延長」を申請します。
この手続きが許可されれば、「最初の60日間 + 延長の30日間 = 合計90日間」の滞在が可能になります。
延長申請には、申請料として1,900バーツ(約8,000円)が必要です。また、申請にはパスポートや申請書、顔写真のほか、滞在先を証明する書類(TM30など)の提出を求められる場合があります。
日本人旅行者の注意点
タイへ渡航する際、ビザの有無に関わらず、すべての日本人が注意すべき点がいくつかあります。
パスポートの残存有効期間
タイ入国時に、パスポートの残存有効期間が6ヶ月以上あることが強く推奨されます。ビザなし入国の場合は最低でも滞在日数以上、ビザを申請する場合は6ヶ月以上の残存期間が必須条件とされています。残存期間がギリギリだと、航空会社のチェックインや入国審査でトラブルになる可能性があるため、必ず事前に確認してください。
TM30(外国人の居住地報告)
タイの法律では、外国人を宿泊させた家主やホテルは、その外国人が到着してから24時間以内に「TM30」という書類を入国管理局に届け出ることが義務付けられています。旅行者の場合、ホテルが代行してくれますが、コンドミニアムや友人の家に滞在する場合は注意が必要です。このTM30の届け出が完了していないと、ビザの延長申請などが受理されないケースがあります。
オーバーステイの厳罰化
滞在許可期限を1日でも超えて滞在することを「オーバーステイ(不法滞在)」と呼びます。オーバーステイには1日あたり500バーツ(最大20,000バーツ)の罰金が科されます。さらに、オーバーステイの期間が長引くと(特に90日以上)、罰金だけでなく、タイへの再入国が一定期間(1年〜10年)禁止される厳しい処分が下されます。滞在期限の管理は徹底してください。
短期出張ならビザは必要か?
タイの会社との会議、商談、視察といった短期の商用目的での渡航について、以前はビザの扱いがグレーゾーンでしたが、現在は明確なルールが設けられています。
結論として、2024年1月1日から2026年12月31日までの期間限定措置として、日本国籍の方は30日以内の短期商用目的であればビザが免除されています。
これにより、観光のビザなし入国と同様に、パスポートのみでタイを訪れ、商談や会議に参加することが可能です。
ただし、これはあくまで「就労」を伴わない活動に限られます。タイ国内で労働許可が必要となるような業務(技術指導、監査、イベント設営など)に従事する場合は、この免除措置の対象外となる可能性があるため注意が必要です。
入国時に求められる可能性のある書類
商用目的でのビザなし入国に際し、入国管理局の担当官から商用目的を証明する書類の提示を求められる場合があります。万が一に備え、以下の書類を準備しておくと安心です。
- タイ側の取引先が発行した招聘状 (Invitation Letter)
- 商談や会議の日程が分かる予約書 (Appointment Letter)
- 自社が発行する出張証明書 (Certification Letter)
ビジネスビザの申請について
タイで「働く」こと、つまり現地採用や日本からの駐在などで給与を得る活動を行う場合は、必ず「ノンイミグラント-B(就労・商用)ビザ」(通称:Bビザ、ビジネスビザ)の取得が必須です。
観光ビザやビザなしで入国してタイ国内で働くことは不法就労となり、逮捕・強制送還の対象となります。
ビジネスビザ取得の一般的な流れは以下の通りです。
STEP 1: タイ国外でノンイミグラント-Bビザ(90日間)を取得
まず、タイ側の雇用主(会社)から必要な書類(労働省からの承認書類、会社登記簿謄本、招聘状など)を送ってもらい、それらの書類を基に、日本のタイ王国大使館・領事館で90日間有効のBビザを申請します。
STEP 2: タイ入国後、労働許可証(ワークパーミット)を申請
Bビザでタイに入国した後、すぐに労働省に対して労働許可証(ワークパーミット)の申請手続きを行います。この許可証があって初めて、タイ国内で合法的に働くことができます。
STEP 3: 1年ビザへの延長
労働許可証が発給されたら、入国時に取得した90日ビザの期限が切れる前に、入国管理局で滞在許可を1年間延長する手続きを行います。これにより、1年間の滞在(就労)が可能となります。以降、雇用が続く限り1年ごとに更新していきます。
ビジネスビザの申請は、タイ側の雇用主の全面的な協力が不可欠です。特に、外国人1名を雇用するためには、原則としてタイ人従業員4名の雇用や、一定額以上の資本金、納税実績などが求められるため、非常に複雑です。手続きは雇用主や代行業者に任せるのが一般的です。
長期滞在向けのタイ ビザ 種類
- タイの5年ビザはいくらですか?
- 富裕層向けエリートビザとは
- ビザ取得日数の目安
- ビザ申請書の記入例と注意点
- まとめ:タイ ビザ 種類の選び方
タイの5年ビザはいくらですか?
「タイの5年ビザ」と一口に言っても、複数の種類が存在し、取得条件や費用(価格)は大きく異なります。主に以下の3つが「5年以上の長期滞在ビザ」として知られています。
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- タイランド・プリビレッジ(エリートビザ): 会員権を購入することで5年、10年、15年、20年の滞在が可能。費用はプランによりますが、5年プランは90万バーツです。
- リタイアメントビザ(O-X): 50歳以上の方が対象。10年(5年+5年)のビザですが、預金300万バーツなど、通常の1年リタイアメントビザ(O-A)より資産要件が厳しくなります。
- LTRビザ(長期居住者ビザ): 2022年から開始された新しいビザ。富裕層、リタイアメント富裕層、専門家、リモートワーカーなどが対象で、10年間の滞在が可能です。ただし、資産100万米ドル以上、または高額な年収(例: 年間8万米ドル)など、条件は非常に厳格です。
このように、ご自身の年齢、資産、タイでの活動目的によって、どのビザが該当するかが変わってきます。一般的に、年齢や資産要件なしで5年以上の滞在を希望する場合、最も現実的な選択肢がエリートビザとなります。
富裕層向けエリートビザとは
エリートビザとは、タイ政府観光庁が国策として運営する外国人向け長期滞在プログラム「タイランド・プリビレッジ」の会員になることで取得できる特別なビザです。
最大の特徴は、年齢、学歴、資産審査、タイでの就労要件などが一切ないことです。会員権(入会金)を支払うことで、5年から20年の長期滞在が許可されます。
さらに、滞在許可だけでなく、以下のようなVIP待遇(プリビレッジ)が受けられる点も大きな魅力です。
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- 空港でのVIP待遇(専用入国レーン、エスコート、ラウンジ利用)
- リムジンでの空港送迎サービス(プランによる)
- 90日レポート(居住地報告)の代行サービス
- 銀行口座の開設サポート
- 各種割引優待(スパ、ゴルフ、レストランなど)
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主なエリートビザのプランと費用
タイランド・プリビレッジは2023年10月にプログラム内容が改定されました。主なプランと入会金(ビザ費用)は以下の通りです。(1バーツ=約4円で換算)
| プラン名 | 滞在可能期間 | 入会金 (バーツ) | 日本円換算 (目安) |
|---|---|---|---|
| GOLD | 5年 | 900,000 THB | 約360万円 |
| PLATINUM | 10年 | 1,500,000 THB | 約600万円 |
| DIAMOND | 15年 | 2,500,000 THB | 約1,000万円 |
| RESERVE | 20年 (招待制) | 5,000,000 THB | 約2,000万円 |
※上記は2025年現在の情報です。最新の価格やプラン詳細は、タイランド・プリビレッジ公式サイトや正規代理店にご確認ください。
ビザ取得日数の目安
ビザ取得にかかる日数(期間)は、申請するビザの種類と、どこで申請するか(日本国内か、タイ国内か、タイ周辺国か)によって大きく変動します。
日本国内の大使館・領事館で申請する場合
観光ビザ(TR)やビジネスビザ(Non-B)など、タイ国外で取得するビザの場合、現在は「e-Visa」と呼ばれるオンライン申請が主流です。
大使館・領事館の公式サイトでは、申請が受理されてから「通常2〜3営業日」で発給されると案内されていることが多いです。
ただし、これは書類に一切不備がなかった場合の日数です。実際には、申請システムの混雑、提出書類の不備・差し戻し、追加書類の要求などで、1週間以上かかるケースも少なくありません。
タイ国内の入国管理局で申請(延長・切り替え)する場合
タイ国内での滞在延長(観光ビザの30日延長など)や、ビザの切り替え(ノービザからリタイアメントビザへの変更など)は、申請場所(バンコクまたは地方)や時期によって審査期間が異なります。
観光ビザの延長(30日)は、書類が揃っていれば即日〜数日で完了することが多いです。
一方、リタイアメントビザ(O-A)への切り替えやビジネスビザの1年更新などは、審査に2週間から1ヶ月程度かかることもあります。
ビザの申請や延長は、必ず滞在期限が切れる前に、余裕を持って行うことが鉄則です。特にe-Visa申請は、発給されるまでパスポートが使えないわけではありませんが、渡航日までに間に合わないリスクを考慮し、最低でも出発の2〜3週間前には申請を完了させることをお勧めします。
ビザ申請書の記入例と注意点
現在、日本のタイ王国大使館・領事館でのビザ申請は、原則として「タイe-Visa公式サイト」からのオンライン申請に移行しています。
紙の申請書に手書きで記入する時代とは異なり、システム上で個人情報、パスポート情報、タイでの滞在先、職業、収入源などを英語(またはタイ語)で入力し、必要な書類(パスポートの顔写真ページ、顔写真データ、航空券予約票、銀行残高証明など)をすべてPDFやJPEG形式でアップロードします。
「記入例」を探す方は多いですが、オンライン申請では画面の指示に従って入力していく形式です。手書き時代より簡単になった一方、入力ミスやアップロード不備が発給遅延の主な原因となっています。
e-Visa申請時の主な注意点

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- パスポート情報の完全一致: 氏名のスペル、パスポート番号、生年月日など、1文字でも間違えるとビザは発給されません(または発給されても入国できません)。
- 顔写真の規格: アップロードする顔写真データは、「6ヶ月以内に撮影」「背景は白」「メガネや帽子の着用不可」など、証明写真の厳しい規格を満たす必要があります。規格外の写真は差し戻しの原因となります。
- 滞在先の明確化: タイ国内での滞在先(最初のホテル名、住所、電話番号)を正確に入力する必要があります。
- 書類の鮮明さ: パスポートや銀行残高証明などをスキャンまたは撮影したデータは、文字が鮮明に読み取れるものでなければなりません。
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虚偽申告は絶対にNG
申請プロセスを簡略化しようと、職業や収入、滞在先などについて事実と異なる情報を入力(虚偽申告)することは絶対におやめください。虚偽申告が発覚した場合、ビザの発給が拒否されるだけでなく、将来的にタイへの入国が永久に禁止される可能性もあります。
まとめ:タイ ビザ 種類の選び方
ご自身のタイ渡航の目的や期間に合わせて、適切なビザを選択することが重要です。最後に、この記事の要点をリストでまとめます。
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- 日本国籍者はビザなしで30日間タイに滞在可能
- 空路入国は30日、陸路入国も30日だが年2回までの制限あり
- 30日を超える観光は「観光ビザ(TR)」が必要
- 観光ビザ(TR)は入国後60日間の滞在が可能
- タイの観光ビザは90日滞在できますか?という質問の答えは「延長すれば可能」
- 60日の観光ビザで入国後、入国管理局で30日の延長申請(有料)を行えば合計90日滞在できる
- パスポートの残存有効期間は6ヶ月以上を推奨
- オーバーステイ(不法滞在)は罰金と再入国禁止処分の対象となるため厳禁
- 短期出張ならビザは必要か?という点については期間限定で免除されている
- 2026年末まで30日以内の商談や会議はビザなしでOK
- タイで働く場合は必ず「ビジネスビザ(Non-B)」が必要
- ビジネスビザの申請にはタイ側雇用主の書類が必須
- タイの5年ビザはいくらですか?という問いには複数の答えがある
- 代表的な長期ビザは「エリートビザ」「リタイアメントO-X」「LTRビザ」
- 富裕層向けのエリートビザは会員権購入で長期滞在が可能
- エリートビザの5年プラン(GOLD)は90万バーツ
- ビザ取得日数の目安は申請場所や種類により異なる
- e-Visa申請は書類不備がなければ数営業日で発給されることが多い
- ビザ申請書の記入例はオンラインシステム(e-Visa)の入力フォームが該当する
- 申請時の入力ミスや写真規格違反に注意が必要
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